外電によると、アメリカの国務省は「2001年人権報告」を発表した。この報告は、日本では援助交際など児童買春が後を絶たず、十代女性の人権が侵害されてゐると批判してゐるといふ。日本の少女が性的搾取や性的虐待を受けてゐるといふのは国連機関の得意なフレーズだが、この国務省レポートもそれに唱和してゐる。
私はこのレポートを書いた人間を一度渋谷の街に招待してやりたいと思ふ。夜の渋谷は制服姿の売春婦の天国だ。彼女たちはケータイ片手にあっけらかんと商売の交渉をしてゐる。このやうな生態をまのあたりにした人間は「日本の十代の性的搾取」をレポートする気は失せるだらう。
いや、この問題で外国の政府機関を責めるのはお門違ひかもしれない。なぜなら、日本の女子中高生は性的搾取の犠牲者であると世界に喧伝してゐるのは、ほかならぬ日本政府と日本のフェミニズム団体なのだから。
■女子中高生売春の免罪符
援助交際をする女子中高生は性的搾取と性的虐待の犠牲者―これは平成十一年に施行された児童買春禁止法の精神でもある。児童買春禁止法第一条は、さしづめ女子中高生の「免責条項」と言へる。
《この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資することを目的とする。》
この条文の言はんとするのは、つまりかういふことだ。「援助交際なんて悪いことではない。女子中高生は被害者。悪いのは少女を買ふ男。男たちはどんどんつかまえてあげるから安心して援助交際に励みなさい」。
かうして女子中高生の売春は公認された。制服を着た売春婦たちはみんな「児童」になつた。ひと仕事で五万円を手にする「被害児童」。悪いのは「買春(かいしゅん)」側だけ。「売る」とか「売春」が悪いといふ発想は放逐された。
■警察に通報する「被害者」たち
実際、児童買春禁止法は女子中高生の意識を根底的に変へた。最近起きた「事件」にこんなのがある。
十五歳の女子中学生がテレクラで知り合つたトラック運転手と現金三万円の約束で売春した。ところが男が約束の金を払はなかつたので警察に被害届を出した。男は逮捕され、自分も補導された。
別の女子高生は、出会ひ系サイトで知り合つた大学生と一晩七万円の約束で売春した。事が終つて男が部屋から逃げたため女子高生は警察に通報した。携帯電話の通信記録から大学生が割れて逮捕され、女子高生は補導された。
いづれのケースも男の誤算は、相手の女が警察には届けないとタカをくくつてゐたことにある。その希望的観測は、女子中高生が売春に罪の意識を持つてゐる事を前提にしてゐた。児童買春禁止法によつてその前提は完全に崩れた。自分は性犯罪の「被害者」であり、おまけに料金を踏み倒された二重の「被害者」だ。警察に被害届けを出して何が悪い!
しかしこんなのはまだ可愛い方だ。美人局に窃盗、脅迫に恐喝と、この世界は今や何でもありの無法地帯なのだ。
ホテルで客のスキをみて、財布や所持品を盗んで逃げるといふ手口は日常茶飯事。先ほどのケースとは逆に、今度は男が警察に届けて少女が捕まる。
女子中学生が客とホテルに入ると男が現れ、金を強奪する。ホテルから出たところで「援助交際をバラす」と仲間が恐喝する。「うちの娘になんといふことをしてくれた」と母親が登場することも珍しくない。この母親はニセ者のこともあり本物のこともある。
売春の周旋も盛んで、要領のいい女子高生は同級生に売春させて自分は上前をピンハネしてゐる。
■世界がもし女子高生100人の村だつたら
「援助交際」といふ言葉が新語・流行語大賞を獲得したのは平成八年だつた。売春のハードルを低くしたのは「援助交際」といふ言葉だつたが、その三年後に導入された児童買春禁止法は売春のハードルを完全に撤去した。
数年前には、援助交際といふ言葉を使はない様にしようといふ運動もあつたし、警察が「援助交際は売春です」といふポスターを作製したこともあつた。援助交際は自分の意思による売春だといふ理由で、警察が少女本人を検挙するケースも出始めてゐた。
しかし、丁度その頃、東京都が「青少年健全育成条例」に「買春(かいしゅん)等処罰規定」を盛り込んで、かうした運動をつぶしにかかつた。
東京都青少年健全育成条例の「買春等処罰規定」は要するに「援助交際は売春ではありません。買ふ方だけが罰せられます」といふ規定である。児童買春禁止法とソックリぢゃないかつて? ソックリなはずだ。児童買春禁止法は東京都青少年健全育成条例をコピーした法律なのだから。結局、フェミニズム勢力の「買春導入戦略」、言ひかへると「日本列島売春化戦略」は成功した。
「世界がもし女子高生100人の村だつたら、10人は売春婦です」。今ベストセラーになつてゐる『世界がもし100人の村だったら』をもじつて言へば、かういふことになるかもしれない。
児童買春禁止法が存続する限り、100人の村が売春婦だらけの村にならないといふ保証はない。
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