選挙における男女共同参画推進条例の利用価値


 フェミニズムは地方自治体のトップにとつて非常に利用価値がある。それを証明したのが、先に広島市で起きた女性助役をめぐるドタバタ劇だつた。

 広島市長のゴリ押しによる女性助役登用問題でコケにされたのは、辞任させられた男性助役だけではない。女性助役に応募した女性もさうだし、助役候補に選ばれた女性だつてさうだ。なぜなら、この市長にとつて大事なのは選挙向け宣伝効果だけ、女性助役が実現するかどうかさへどうでもよかつたのだから。

 広島市の女性助役をめぐるドタバタ劇を整理するとかうなる。

・平成13年
 9月28日 広島市男女共同参画推進条例が広島市議会で可決・
 成立し、同日付けで公布・施行。

・平成14年
 1月4日 秋葉忠利市長が女性助役の公募を発表。
 1月15日 女性助役の応募受け付け開始。
 2月16日 応募総数132人と発表。
 2月  市議会、女性助役問題で紛糾。
 3月12日 市長が森元弘志助役に辞職を要請。
 3月14日 森元助役が辞職。
 3月18日 小田治義助役も辞表提出。
 3月25日 女性助役候補として都市・地域プランナーの猪爪範
 子氏(59)を市議会に提示。
 3月27日 市議会、猪爪氏ら新任助役二人の選任同意案を否
 決。
 4月1日 助役不在になる。

 すでに助役が二人もゐて大赤字を抱へる自治体が、年間五千万円の経費をかけて三人目の助役を公募しようといふのだから、この市長の頭は確かに尋常でない。議会や市民の間から反対の火の手があがると、「助役二人なら文句はないだらう」とばかり現職助役に辞任を迫り、結局、生へ抜きの助役二人は辞表を提出した。

 この元社民党衆議院議員のハレンチ市長が後ろ盾にしてゐるのが、昨年九月に施行された広島市男女共同参画推進条例だ。全国の自治体は男女共同参画の条例を制定しつつあるが、広島市のものはジェンダー・フリー思想がふんだんに盛り込まれ、次の前文のやうにラディカル・フェミニストストが泣いて喜びさうな文言が並ぶ。

 《 原子爆弾によって壊滅的な被害を受けた広島は、日本国憲法の下、民主主義の成長とともに、奇跡的な復興を遂げる一方で、自らの悲惨な体験から、世界の平和を希求してきた。
 平和とは紛争や戦争のない状態だけをいうのではない。すべての人が差別や抑圧から解放されて初めて平和といえる。男女においては、性別による差別がなく、対等のパートナーとして責任を分かち合い、個性や能力を十分に発揮できる社会を実現することが必要である。それは、本市が目指す国際平和文化都市に欠かせない要件の一つであり、これまで、各種の取組が行われてきた。
 しかし,現実には,社会において、性別による固定的な役割分担等を反映した制度又は慣行が、いまだに根強く残っており、男女平等の達成には多くの課題がある。》

 「原子爆弾」に「抑圧」に「解放」ときて、その後で「性別による固定的な役割分担」を糾弾するのだからすごい。

 広島ではまず、広島県が県男女共同参画推進条例の制定に着手したが、県議有志が県当局の条例原案に問題があることに気付き、原案の文言を手直しさせた。ところが、県に続いて男女共同参画推進条例を策定した広島市では、ラディカル・フェミニズムのパンフレットまがひの原案が議会でろくに審議もされず通つてしまつた。フリーパスでフェミナチ条例を誕生させた市議会――女性助役に反対した市議を含めて――の責任は重い。

 さて、広島市の条例にはもうひとつ爆弾が仕掛けられてゐる。補助金の交付を女性の「参画」状況と結びつけたことだ。こつそり盛り込まれた条例の第17条。
 
《第17条 市長は、補助金の交付において、必要があると認めるときは、方針の決定過程への女性の参画の推進その他の男女共同参画の推進に関し適切な措置を講ずるよう求めることができる。》

 この条項を活用すれば、女性の参画が少ないことを理由に補助金の対象事業者から外すことが可能になる。経営陣や管理職に男性の方が多い企業は99%を占めるだらう。といふことは、市長は補助金対象のあらゆる事業者に対して、「おたくは女性の幹部が少ないやうだが・・」と揺さぶることができるとわけだ。

 人事は経営権そのもの。だから、この第17条は市長に民間企業の経営に容喙する権利を与へた条項とも言へる。女性の登用に難色を示す企業にはそれなりの見返りも期待できる。もちろん選挙にも使へる。うまいことを考へたものだ。

 この市長が男女共同参画推進条例を利用し、来年の市長選挙に向けてどういふ手品を始めるか、広島市民と一緒にお手並み拝見といかう。

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