体制パラサイトフェミニスト樋口恵子の処世術



  「軍国おじさんに平和ボケばあさんの対立軸なんていいぢゃないですか」と、樋口恵子が都知事選に出馬した。「軍国おじさんに平和ボケばあさん」は「スパルタおじさんとフェミニストばあさん」と言ひ換へてもよからう。樋口恵子はフェミニスト業界の成功者である。よく言へば(こちらサイドからみて)穏健フェミスト、悪く言へば体制パラサイト・フェミニスト。つまり行政に寄生して生きてきたフェミニストだ。

 中央社会福祉審議会委員、地方分権推進委員会委員、老人医療保健福祉審議会委員、社会保障審議会委員、総理府男女共同参画審議会、内閣府男女共同参画会議・仕事と子育て両立支援案に関する専門調査会会長、内閣府男女共同参画会議議員、女性の活躍推進協議会委員・・・・・。これは樋口恵子が歴任した政府機関の役職名だ。よくまあこんなにこなしてきたものだ。

 政府機関だけではない。東京都から頂戴した肩書きの数も相当なものだ。東京都社会教育委員、東京都職業訓練審議会副会長、東京都児童福祉審議会委員、東京都女性問題協議会会長、等々。

 東京都女性問題協議会の会長をつとめてゐた時のハイライトは、東京都男女平等参画条例案づくりだつた。ジェンダーフリーといふ用語を広めた東京女性財団が発足したのは平成四年で、都のフェミニズム政策は国よりはるか先を行つてゐた。同協議会が条例案づくりに着手したのは男女共同参画社会基本法が制定される前だつた。当時の知事は青島幸男。ところが条例案骨子を答申した時には、知事は石原慎太郎に代はつてゐた。

 青島都政下で好き勝手にやつてきてフェミニズム色の強い条例案を作成した女性問題協議会のフェミニストは、石原知事の登場で「条例案がズタズタにされはしないか」と青くなつた。樋口会長はおそるおそる答申書を手渡しに知事室を訪れた。石原知事は「このオバさん恐いだよな」と軽口をたたきながら笑顔で答申を受け取つた。結局、知事は前文に「男女は互いの違いを認めつつ」といふ文言だけを挿入して条例案を議会に上程した。フェミニストたちにとつて画龍点晴を欠いたのは否めなかったものの、大幅修正が避けられてなかば安堵した。

 石原知事は東京女性財団を廃止し、「ババア発言」(「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババアなんだそうだ」と東大教授の言葉を引用しての発言)でフェミニストの怒りを買つてゐるが、ババア発言などは石原知事がよくやるマスコミ向け意図的放言サービスにすぎない。第一、この人にフェミニズムアレルギーがあるわけもない。フェミニズム問題に関心のある人は覚えておかれたい。野中広務らと自社野合政権の実現に奮闘したのが自民党代議士時代の石原慎太郎だといふことを。この自社野合政権がその後の政府のフェミニズム路線を方向づけたことは周知の通り。男女共同参画基本法成立の立役者が小渕内閣官房長官野中広務で、その野中と石原は今も定期的にメシを食つてゐる(野中と石原は北朝鮮拉致問題ではまつたく立場を異にするがそれでも仲良くやつてゐる。そんなもんだ政治家は)。

 話を樋口恵子に戻すと、彼女が都知事選に立候補するので辞任したポストに「女性と仕事の未来館」館長といふのがある。厚生労働省の外郭団体「財団法人女性労働協会」が運営し、年間五億円の運営費はすべて国費でまかなはれてゐる。同館は平成十二年に発足し、樋口はその初代館長に就任した。館長は非常勤職だが、手当ては一日当たり五万円、二十日出勤すれば百万円といふオイシイ仕事。フルタイムで出勤することは少ないといふので実際は時給制にしてゐたらしいが、それでも時給6700円! 一日五時間、三日で十万円。大した仕事もない名誉職には結構な報酬ではないか。

 彼女には「高齢社会をよくする女性の会」代表といふ肩書きもあるが、こちらも官庁の息のかかつた団体。これでお分かりのやうに、樋口恵子は体制パラサイト・フェミニストといふ呼称がまことにピッタリくる人物なのだ。

 ラディカル・フェミニストではない。「濡れ落ち葉」と男を嘲笑しはするが、男を地上から抹殺してしまへとは言はない。まあ、旧社会党的日和見的メンタリティの持ち主といふべきか(福島瑞穂は樋口を師と仰ぎ堂本暁子は数十年来のポン友)。そんな人物が準国家公務員ポストにありつけるのも自社野合政権以降の霞ヶ関風景といへようか。

 樋口陣営のホームページには「わたしたち、樋口さんを応援します!」といふ見出しで応援団が名を連ねてゐる。七十人ばかりの名簿をよく見てゆくと、ゐるゐる、体制パラサイト・フェミニストが。男女共同参画局御用達フェミニスト、審議会掛け持ちフェミニスト、女性センタ−館長ポストを手離さうとしない権力志向フェミニスト・・・・。樋口恵子は体制パラサイト・フェミニストのはしり的存在だが、政府のフェミニズム関連予算が急増するのに伴ひ、体制パラサイト・フェミニストの数も飛躍的に増えてゐる。

 さて、樋口恵子はどう転んでも当選の目のない都知事選にどうして出馬する気になつたのだらう? これまでいくらでもあつた選挙出馬の話はことごとく断はつてきたといふのに。都知事選が軍国おじさんの信任投票になるのは耐えがたいといふのが表向きの出馬理由だが、事情通に言はせると、石原知事は二期目の途中で総理大臣の座を狙つて辞任する可能性がコンマ・一パーセントくらゐある。さうなれば次点者に知事の椅子が転がり込む。そのコンマ・一パーセントの可能性に賭けたのだといふ。その真偽のほどは知らないが、ありさうな話ではある。参議院議員の椅子を捨て、タレント商売の邪魔になる社民党臭を消し去るチャンスとばかり神奈川県知事選に立候補した田嶋陽子といひ、フェミニストばあさんたちはどこまでもしたたかなのである。



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