模範的な夫婦別姓を実践してゐる御夫婦

 みなさん、今日は模範的な夫婦別姓を実践してゐる御夫婦を紹介しませう。あの自民党のマドンナ、野田聖子サンと鶴保庸介サンです。お二人は国会議員としての立場から国民のために、夫婦別姓を実践すれば皆さんもかうなりますよ、といふ模範をみせてゐるところです。さあ野田・鶴保御夫婦の実践に学びませう。

■目指せ女性首相と“総理ハズバンド

 野田聖子サンと鶴保庸介サンが、「わたしたち結婚します」と記者会見したのは平成十三年五月のことでした。読売新聞なんかは一面トップでこんな記事を載せてゐます。見出しは 《「夢は女性首相」二人三脚》。

《目指せ女性首相と“総理ハズバンド”――。「自民党のマドンナ」「聖子ちゃん」と呼ばれる野田聖子・元郵政相(40)(衆院岐阜一区)がこの夏、四十年の独身生活にピリオドを打つ。相手は保守党の若手、鶴保(つるほ)庸介参院議員(34)(和歌山選挙区)。野田さんは、わずか三日で結婚を決意した。「国会議員とは結婚するつもりはなかった」だけに、結婚までに解決しないといけない問題も少なくない。

 「出産費用って七十万円もかかるらしいよ」
 「まかしとき」
 「出産に立ち会う人もいるけど、あなたはどうするの」
 「僕は立ち会ってみたいな」

 十五日朝、野田さんと鶴保さんの携帯電話での会話は「子づくり」がテーマだった。国会議員として多忙な毎日に、「ゆっくり会えるのは夜中」(鶴保さん)という二人に携帯電話は欠かせない。会話だけでなくメールで結婚式や披露宴の日取り、場所なども相談しているIT(情報技術)カップルだ。(以下略)》

 女性首相に総理ハズバンド。国会議事堂を背に並んだお二人は幸せいつぱいの笑顔。まるで女性週刊誌のノリです。

 でも好事魔多し。このあと鶴保サンの女性スキャンダルが噴出し、過去に婚約者がゐただの、永田町きつてのプレイボーイだの、週刊誌にさんざん書きたてられてしまひました。

 しかし野田サンはさすがに大臣経験者。マスコミの取材攻勢を柳に風と受け流し、やがて女性スキャンダルは一件落着(?)。八月にハワイで結婚式をあげました。秋には、お二人の選挙区の岐阜・和歌山と東京で披露宴を予定してゐましたが、アメリカで起きたテロ事件の影響で中止になつたのは気の毒でした。

■夫婦別姓に反対するひとたちは抵抗勢力

 さて、野田サンは人も知る夫婦別姓の信奉者です。この点においては、社民党や民主党のフェミニストも顔負けの筋金入りです。野田サンはある講演でこんなことを言つてゐます。

《そういう中で一番大切なことは、この国は窮屈な強制的な押しつけの国ではなくて、いろんな結婚に対しての考え方があって、自分たちが幸せに感じた中で社会に貢献できるような、そういう緩やかな国であるということ。そろそろ官僚政治から脱却するためにも必要な行動ではないかということで、私は選択的夫婦別姓を、いろんな改革が唱えられている中で、構造改革の一つとしてとらえ、実現に取り組んでいます。これは金もかからない、そして痛みもそんなにない。要するに同姓で続けたい人はそのまま存続できるわけですし、みんなに強制する話ではありません。そういう小さなささやかな改革を臨時国会でどかんとやりたいなと思っていますが、相も変わらず抵抗勢力によって今私は散々な目に遭っています。》

 夫婦別姓の導入は構造改革で、夫婦別姓に反対するひとたちは抵抗勢力! このやうに小泉構造改革と夫婦別姓を結びつけるところなど、野田サンの政治家としての非凡さを表わしてゐます。

 なんでも野田サンの政策秘書をしてゐる妹さんは、前から夫婦別姓を実践してゐるさうです。この妹さんは以前は大学講師をしてゐた人で、野田サンのフェミニスト的政策の知恵袋といふウワサです。

■「夫婦同性制度は郵便局程度の歴史しかない」

 野田サンは夫婦同性の歴史についてこんなことも言つてゐます。

《夫婦別姓は日本国民にとって異常だと思われるかもしれません。日本の伝統文化である夫婦同氏制度を崩壊させることは日本文化につばをすることだと盛んに言われますが、この夫婦同姓という制度ができたのはいつごろか。実は皆さんが思っているほど歴史がなくて、郵便局ができたのと同じころなんです。まだ百年ちょっとの歴史しかなくて、歴史とは言えない歴史です。徳川時代に女性の名字がありましたか。よほど高貴な人しか名字は持たされていませんでした。明治政府になって初めて、どこかの国が同じ名字を名乗っているというのを輸入したに過ぎないんですよ。》

 夫婦同性の歴史は郵便局と同じ! さすがに元郵政大臣です。野田サンは郵便局については存続派だから、野田内閣になると、夫婦同性制度だけが消えゆく運命にあるやうです。

 かうした信念の方ですから、野田サンは鶴保聖子になるといふ気はこれつぽつちもありませんでした。鶴保さんも野田庸介になるつもりはなかつた。それでお二人は「事実婚」に突入したのです。だから戸籍上は野田聖子と鶴保庸介のままです。「事実婚」といふのも夫婦別姓の一種ですから、野田さんは別姓の初志を貫いたことになります。

 野田サンは、与党女性議員政策提言協議会の「選択的夫婦別姓に関するプロジェクトチーム座長」として、自民党三役に対して夫婦別姓の早期導入を求める申し入れをしたばかりです。野田サンは同じ派閥の先輩である森山真弓法務大臣を心から尊敬してゐて、夫婦別姓を推進する法務省にとつて実に頼りになる味方です。

■鶴保サンの本音

 さて夫の鶴保サンは夫婦別姓をどのやうに考えてゐのでせうか? 鶴保サンは参議院の「共生社会に関する調査会」といふところで次のやうに発言してゐます。

《さきの質問で、選択的夫婦別姓についてですが、党の代表としてというよりも、これは個人的な意見をさせていただきたいと思いますけれども、私は制度としてはっきり賛成と申し上げております。選択的制度を設けることについては賛成であります。自立した個人がそういう制度を選ぶかどうかという部分については、自由に選択肢があっていいと、しかるべきであろうというふうに思います。
 ただ、社会的にコンセンサスを得ているかどうか、その制度をつくることによって一般論として別姓制度が普遍化するかということについてはまだまだ実は懐疑的でありまして、その辺、議論の必要なところ、それを前提とした次の制度をつくろうということになると、まだまだ議論のあるところだろうというふうに思っております。》

 前段では、制度として選択的制度を設けることに賛成と言つてゐながら、後段の部分では「別姓制度が普遍化するかということについてはまだまだ実は懐疑的」などと難しい表現を使つてをられます。

 でも後段のくだりをよく読んで下さい。「本当ハ別姓ニ賛成デハナイ」といふ鶴保サンの本音が聞こえてこないでせうか? ついでに言へば、この発言は鶴保サンが結婚記者会見をした後のものです。

■「事実婚」だと総理大臣になる夢は叶へられない

 このやうに、別姓をめぐつて男と女の意見が違つた時はどうしたらよいか? 「トリアヘズ事実婚ヲセヨ」。これが正しい別姓の進め方です。野田サンもそれを実践されました。

 でも残念なことに、「事実婚」のままだと、野田サンが総理大臣になる夢は叶へられさうにありません。お二人の夢は「女性首相に総理ハズバンド」なのですから。

 野田サンは「困つてゐる女性たちのために早く別姓制度を実現してあげたい」と語つてをられます。でも本当に困つてゐるのは実は野田サン自身なのです。それで野田サンは今、「民法を改正して夫婦別姓を」と自民党議員の間を駆けずり回つてゐるといふわけなのです。
                        (平成13年12月28日)
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