ついにと言ふべきか、堂本千葉県知事の盟友である自民党ボス県議の税金不正免除疑惑に、強制捜査のメスが入つた。 千葉県警は十一日、千葉市の前納税管理課長の大塚良光と前特別滞納整理室長の西郡春男の二人を公電磁的記録不正作出・同供用の疑ひで逮捕し、千葉市役所を家宅捜索した。
疑惑の主は花沢三郎・自民党県議で、大塚・前納税管理課長は花沢県議の親類。逮捕された二人は、平成十四年六月、花沢県議に対する平成三年分の市県民税の未納額約三千万円について、税務部長の承認もないのに、税務オンラインシステムの端末機を操作して、納税免除に当たる「処分停止」にした疑ひが持たれてゐる。つまり、大塚・前納税管理課長は、親類にあたる花沢県議の三千万円にのぼる市県民税をこつそりチャラにしてゐたわけだ。
花沢県議の市県民税不正免除疑惑は昨年十二月に匿名の内部告発で発覚し、大塚は今年一月に懲戒免職になつてゐる。
さて、この花沢県議と堂本知事の御関係を改めて説明しよう。このことは、拙著『男と女の戦争ー反フェミニズム入門』にも少し書いたが、要するに堂本知事が千葉県男女共同参画条例を成立させんがために、取り込みを図つたのが花沢県議その人なのだ。
「諸君」の平成十四年十二月号に寄稿した「千葉ジェンダーフリー帝国の夢潰ゆ」(『男と女の戦争』所収)から引用しよう。
《千葉県政界では、堂本知事が千葉県政を牛耳つてゐる自民党の「ボス」県議を取り込み、条例成立に協力してもらふ密約を結んでゐたといふのがもつぱらの噂である。この県議は自民党の最大派閥を率ゐ、県連の執行部も同派が握つてゐるから、「ボス県議」を味方につければ条例反対派を押さえ込むことができる。堂本知事はさう考へた。そして実際の動きも途中までは、そのシナリオ通りに展開した》
《それにしても、堂本知事はどのやうにしてこの大物県議に取り合入つたのだらう。この県議は千葉県の土建業界のフィクサーでもあつて、黒い噂がたへない人物である。そのため、堂本知事との「取引」も、県の公共事業に絡む裏取引があつたのではないかと、いかにも金権千葉らしい話が流布されてゐる》
ここに書いたやうに、花沢県議は京葉政経研究会といふ自民党の最大派閥を率ゐる千葉県政界の大ボスである。堂本氏が知事が就任した時に花沢氏は県議会議長をつとめてゐた。その時に二人は極めて親密な間柄になつたと言はれてゐる。そして花沢県議は自民党内の反対を押し切つて男女共同参画条例案を通さうと画策する。
千葉市の鶴岡啓一市長も花沢県議の子分である。鶴岡市長は、花沢県議の滞納が続いてゐた時期に市の税務担当助役をつとめてゐた。おまけに、大塚が三千万円をこつそり不正免除した翌年、大塚を参事に昇給させてゐる。これは破格の抜擢だ。鶴岡市長が平成十三年に助役から市長選に立候補した時、選対本部長として選挙を取り仕切つたのが花沢県議だつた。
これほどの問題にもかかはらず、鶴岡市長は先月、この問題で警察に告訴しないことを決めたと発表した。千葉市民はあきれた。鶴岡市長の関与がなかつたと信ずる市民はひとりもゐない。今回の強制捜査は、この鶴岡市長の世論を無視した非常識な「決定」に対する捜査当局の「挑戦」とも言へる。
花沢県議は公共事業などの利権で子分たちを養つてきた。県議二期目の時には、土地区画整理事業をめぐる収賄容疑で逮捕され有罪判決を受けてゐる。 このやうな立派な御仁こそ、堂本知事が千葉県議会における盟友と頼む人物なのだ。
来年の知事選挙で再選を狙ふ堂本知事は、自民党の推薦欲しさに最近、異常なほど自民党に擦り寄つてゐる。しかし、盟友の疑惑をめぐる捜査の進展によつては、堂本知事の再選のシナリオが大きく狂ふ。狂ふどころか、自分の足元にも火がつきかねない。
堂本知事は捜査の成り行きを固唾をのんで見守つてゐるはずだ。千葉県警の「疑惑解明」に大いに期待しようではないか。
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