土壇場にきた教育基本法改正案

国会審議は愚劣の極み

 「修正」の可能性はゼロパーセント



 与党は教育基本法改正案を来週中に衆議院を通過させるべく画策してゐるが、民主党は、採決拒否の姿勢から採決やむなしの方向に転じ、再び採決拒否に傾いてゐる。本音は政府案反対の保守派も、国会の成り行きを見守つてゐるといふ状況だ。国会の会期末は12月15日。来週中に衆議院を通過させ、残り1ヶ月で参議院させるといふのが与党の描くスケジュールだが、言ひ換へると、来週中に衆議院を通過させなければ今国会での成立はなくなるわけだ。

 安倍首相は戦後レジームからの脱却とか言つて、教育基本法改正案成立に向けてまつしぐらだが、教育基本法改正案を審議する国会の状況は、「空虚」の一言に尽きる。

 衆議院特別委員会では、高校必修科目の未履修といじめ自殺問題に議論が集中し、民主党は時間かせぎの種ができたとばかりに、、未履修問題に時間を費やした。ところが、なんとしても今国会で教育基本法改正案を成立させたい公明党が安倍首相に働きかけ、補修時間を大幅に軽減する超法規的措置をとることでこの問題の早期幕
引きを図つた。

 自民党との修正協議を拒否し、だらだらと時間かせぎをすること。これが教育基本法問題に対する民主党の基本方針だつた。民主党が一番恐れてゐたのが、自民党が民主党案の「国を愛する心」だとか保守層好みの条文を取り入れてしまふことで、修正協議に応ずれば必ずそのやうな方向に話が進まざるをえない。民主党が修正協議に応じるわけもない。

 民主党が採決拒否の姿勢から、採決やむなしの方向に転換したのは、時間かぜぎの種が尽きたことに加へ、自民党案が民主党案の条文を取り入れる可能性が完全に消えたからである。「日本を愛する心」や「宗教的感性の涵養」などはどうせ自民党を分断するために盛り込んだ条文だ。そんなものが入るくらいなら、政府案のままの方がよい・・・。これが民主党幹部の本音なのだ。

 民主党が採決拒否に再び転じたのは、教育改革タウンミーティングのやらせ質問問題で文部科学省の関与がクローズアップされてきたことと、アメリカの中間選挙での共和党敗北、ラムズフェルド国防長官の首切りが影響してゐる。

 ブッシュがイラク戦争の誤りを認めたことで、ブッシュべつたりでやつてきた我が国の国防政策が転換を迫られる可能性が出てきた。防衛省昇格法案でゴネる材料が出てきたと民主党は喜んでゐる。民主党は防衛省昇格法案と教育基本法改正案を両天秤にかけてきた。防衛省昇格法案は最終的には賛成せざるをえないが、19日の沖縄知事選までは態度を不鮮明にしておきたい。防衛省昇格法案を引つ張る代はりに、教育基本法改正法案で妥協するといふ判断にいつたん傾いたものの、ここへきて、「両方いけるじゃないか」と色めきたつてゐる。この政党の本質は旧社会党そのままである。

 片や自民党。内心「公明色芬芬のこんな法案は廃案になってくれれば」と思つてゐる自民党議員も少なからず存在するらしいが、今の自民党はそれを言へる雰囲気ではない。なにせ「戦後レジームからの脱却」といふ安倍政権の立派なスローガンが背後に掲げられてゐるから。政府案になにか言へば安倍批判になつてしまふ。今の自民党では安倍批判はタブーなのだ。

 過日、都内で教育基本法改正案の共同修正を求める集会が開催された。登壇した自民党議員たちは、修正に持つていけるやうに頑張ります、なんて口々に述べてゐたけれど、もはや修正の可能性が100%ないことをよく知つてゐながら、こんなことを公言するのは、リップサービスを通り越して詐欺に近い。出席が予定されてゐた下村博文・官房副長官(かつては政府案の修正を主張してゐた人)はついに姿をみせなかつた。
  
 集会の会場で自民・民主の共同修正に賛同する国会議員は192人と発表されたけれど、賛同した自民党議員たちは、もし修正がなされないまま採決に持ち込まれた時、どうするつもりなのか。「日教組や人権左派、フェミニズム勢力を利するこのやうな法案には到底賛成できない」と敢然と反対する自民党議員がひとりでも現れるのだらうか。

 来年の参議院選挙で公明党にフル稼働してもらうために、なんとしても、教育基本法改正案を今国会で通したい自民党(安倍氏は総裁選当選の二日後に創価学会名誉会長の池田大作と会つてゐるが、一時間に及ぶ会談中、教育基本法改正法案の取り扱ひについても話し合はれたと思はれる)。

 一方、教育問題にも防衛問題にもなんの原理原則もなく、政治情勢のままに浮遊する民主党。

 愚劣の極みのやうな国会の有様を見てゐて、これのどこが「戦後レジームからの脱却」なのかと思ふ。教育基本法改正問題で露呈されたこのいい加減さこそ、まさに「戦後レジーム」そのものではないか。



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